「企業で半年過ごしてわかった、医師の”強み”と”弱み”」

お知らせ

医師が研究でも臨床でもなくBizDevに飛び込んでみて感じたこと

自分の場合、博士号も持っていないので研究サイドで働く選択肢はそもそもなかった。
だから、医療現場から一歩外に出て、いわゆる「BizDev(ビジネス開発)」的な領域に足を踏み入れてみたときの話をしてみたい。

ここに書く「医師の強み・弱み」は、あくまで自分の体験から感じたことにすぎない。
すべての医師に当てはまる話ではないと思う。


医師として働いて感じた「強み」

医師が医療現場を離れると、極端な話「医学に詳しいおじさん」になってしまう。
だからこそ、その“おじさんならではの強み”をどう活かすかが重要になる。

1. 吸収力

医師は日常的に膨大な情報を扱っている。
新しい知識やガイドラインが常に更新される環境に身を置いていたため、定期的に新しいインプットを取り込む習慣が自然と身についている。
この「情報を吸収し、整理し、すぐに実践に落とし込む」力は、ビジネスの世界でも確実に役立つ。

2. 言い訳をしない姿勢

臨床現場では、最終責任を自分が負うことが多い。
「やったことがないからできません」では済まされない。
だからこそ、調べる・聞く・試す——どんな手段でも問題を解決しようとする粘り強さが身についている。
この姿勢はビジネスでも非常に重宝されると思う。

3. 察する力(コミュニケーション能力)

医師の「コミュ力」は、いわゆる社交的な意味とは少し違う。
患者さんが言葉にできない悩みや不調を「察する」力。
特に私が昔働いていた小児科では、患者本人が何も話せないことも多い。
相手の立場や背景を読み取る能力は、社外・社内問わずコミュニケーションの根幹になる。


一方で感じた「弱み」

1. 変なプライド

これは自分でも最初から意識していた。
「医師」という肩書きのせいで、実力以上に“頭のいい人”として扱われがち。
その錯覚がプライドを育ててしまう。
もちろん、倫理的・科学的なこだわりは大事だが、医業とビジネスは別物
そこを混同すると「めんどくさい人」になる。

2. 一般的な教養の不足

医療の世界では必要な知識が極端に偏っている。
社会人としての常識や、業界用語、ビジネスマナー、メールの書き方など——
最初は何から何までつまずいた。


「自愛」と「高慢」のあいだで

ここで少し抽象的な話をしたい。
哲学的にいうと、人には「自愛」と「高慢」という二つの傾向がある。

  • 自愛:自分の完全性に満足し、己を非難しない傾向。
  • 高慢:己の功徳を誇張し、実際以上に誇る傾向。

医師という職業は、人の命に関わるという意味で尊い。
しかし、医療現場以外で働く人たちも、同じように徳のある仕事をしている。
それを理解せず、自分の経験だけで優越感に浸ってしまうと、世界がどんどん狭くなる。

もし「自分は特別だ」と思ってしまうなら、おとなしく医療現場に戻ったほうがいい。
そのほうが、たぶん自分も周囲も幸せだろう。


終わりに

医師が医療の外に出るとき、求められるのは“専門知識”よりも“姿勢”だと思う。
学び続ける力、責任を引き受ける覚悟、そして他者を理解しようとする心。
それらを忘れなければ、どんな領域に行っても、きっと価値を生み出せる。


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